マインドコントロール〜カルトメンバーの心理

 

このページではマインドコントロールされたカルトメンバーの心模様について述べていきます。

 

あなたにとって大切な人がカルトメンバーになってしまったとき、彼(彼女)は何を思い何を考えているのか。

 

それを解説していきます。

 

カルト組織の魅力、そして植え付けられた恐怖感

 

マインドコントロールとは人間をロボット化しラジコン操縦するような技術ではありません。

 

本人があらかじめ持っていた「欲求」とか「目標」といったものを増幅し、脚色し、コントロールしていくものです。

 

だからこそなかなか抜けられないのです。

 

カルトの世界は少なくとも入信したての時は、非常に甘美で、魅力的なものであることが指摘されています。

 

組織に魅力を感じ、精力的に活動しているときは本人は非常に大きなやりがいを感じているものです。

 

「カルトの魅力をリストアップしてみますと、それらの多くは私たちが必要としているものですが、手に入らないものばかりなのです。」
(スタンフォード大学名誉教授F・ジンバルドー)

 

しかし、です。

 

カルト組織の充実感と表裏一体のものとして、「脱会することへの恐怖感」が心の奥底には潜んでいます。

 

ほぼすべての組織のメンバーに共通するのですが、メンバーには恐怖心が刷り込まれているのです。たとえば「途中で組織をやめたら無間地獄に堕ちる」とか「家族が事故に遭う、死ぬ」とかいった教えです。

 

普段は使命感や充実感で満たされているのだけれども、何かの拍子に組織に疑問を持ったり、辞めたくなったりしたときに「恐怖心」が表に出てきて歯止めをかけるという仕組みになっているのです。

 

 

 

カルトメンバーの心理を考えるのには、「カルトの魅力」と「植え付けられた恐怖感」の二つを考慮しなくてはなりません。

 

カルトの魅力

 

まず、カルトの魅力についてから解説します。

 

(1)「優れた真理を知っている」という優越感を感じている。

 

自分たちの組織や教学がこの世で唯一価値があり正しいものであると思っています。

 

それゆえ、カルトメンバーは自分自身は世間一般の人(組織外の人)よりも人格的にも能力的にも優れた存在だと考えています。

 

彼らにとって、世間一般の人(組織外の人)は「影響をうけてはいけない人」だったり、「救済してやらなければならない人」であったりするのです

 

 

元カルトメンバーの証言〜Aさん

 

人間って、人が知らない特別なものを知っているって気持ちがいいものじゃないですか。まわりはみな地獄行きの人生を送っているのに、自分たちは仏の慈悲に救われてね。本当の幸福に至る道を知っているんだ!みたいな高揚感があるんですよね。世の中の人はあくせく働いてるけれど、僕らは永遠に変わらない幸せを求めている。あんなのとは違うぜ!って思っていました。

 

(2)自分を変えることができる。

 

・自分自身に自信がもてた。強くなれた。

 

・自分の意見をはっきり主張できるようになった。

 

・罪悪感や劣等感がなくなった。

 

・不運の連続だった人生を変えられる。

 

カルトメンバーの中には入信前、対人関係に自信を持てずに生きづらさを感じていたり、学業や仕事などの目標を達成できず、挫折感を感じていた人たちもいます。

 

また、勧誘された時に、過去のあやまちや失敗などを告白させられ、罪悪感やコンプレックスを過度に強調されることがあります。

 

こうした「罪悪感」や「コンプレックス」を克服できると説くのがカルトなのです。

 

実際に勧誘活動に熱心に取り組んでいたりすると、自然に人に対しての接し方がうまくなったり、人前で堂々と話ができるようになることがあります。

 

実際に勧誘がうまくいった時の成功体験の積み重ねは、カルト入信前までは対人関係に苦手意識を持っていたカルトメンバーにとって自信となりえます。

 

こうした成功体験がカルトの教学にリアリティを持たしている部分もあるのです。

 

元カルトメンバーの証言

 

Bさん

 

入信したときには本当に自分が変わりたいって思っていて、入ったことで実際に変われた部分がありました。頑張っている自分を認められるようになってわりと自分を好きになれたんです。入る前は何もせずどうせこんなもんだって投げやりっていうかマイナス思考でしたけど、活動を通して頑張れば自分でもできることもあるんだっていうふうに思えるようになりました。

 

Cさん

 

毎日初対面の人の自宅を訪問して布教していましたから、不審者扱いされたり気難しいおじさんに怒鳴られたりとか散々でしたけど、そういう経験でも積み重ねていくとだんだん慣れてくるものです。そういう経験でも積み重ねていくとだんだん慣れてくるものです。そういう経験を通して、今は初体面の人と出会ってももう物怖じしなくなりましたね。

 

(3)組織内の活動や学習にやりがいや高揚感がある。

 

・自分の人生に目標を持つことができた。

 

・組織には熱気があり、活動に張り合いがある。

 

・社会正義や理想社会の実現のために闘っている。

 

仕事や学業を続ける中で、「やりがい」や「面白さ」を見出すことができなかったり、「目標」を見失っているときなど、カルトの説く「理想社会」であるとか「人類の救済」などのユートピア幻想が非常に魅力的に見えることがあります。

 

ユートピア建設のための勧誘活動や資金集めにはチームワークが要求される場面もあり、こうした活動を通づけるなかでのカルトメンバー間の連帯感や友情を深めていったりします。

 

こうした日々は、精神的にも肉体的にも辛いものですが、同時に充実感を感じるものなのです

 

 

(4)自分のこと愛してくれる。自分の居場所がある。

 

・自分を承認してくれる組織の仲間と先輩がいる。

 

・カルト組織の辛い活動も支え合い、助け合う仲間がいる。

 

・共に活動している仲間に対して同志として友情を感じる。

 

学校や職場の中で孤立感を感じていたり、家庭内で配偶者との関係性に悩みを持っていたりした場合、カルト組織内の連帯感は非常に大きな魅力となりえます。

 

人は誰でも「愛されていたい」とか「大切にされたい」という欲求をもっており、その欲求をカルト組織が満たしている状態になっているのです。

 

元カルトメンバーの証言

 

Dさん

 

なんか熱いっていうか、そういうのがあるんです。今までの遊びとは違う。高校生はあんまりそういうのがないんです。仲間意識があって、共通の目標である布教にまい進する。皆いい人なんですよ。自分の話も聞いてくれて。

 

Eさん

 

そこにいる人たちとは一緒にいると楽しいし、みんな一生懸命で、真面目だし健全なんです。女遊びもしていないし。だから一緒にいると成長できると思いました。やっぱり世の中の人は刹那的というか、物質的というか、何か大事なものが抜けているな、と思っていましたね。愛が足りないと思っていました。自分たちの世界には愛があると思っていました。

 

カルト組織の活動や教学に矛盾を感じ始めたとしても、「組織の仲間を裏切れない」とか「自分の居場所を失ってしまいたくない」という気持ちが足かせとなり、脱会することができない、ということはよくあります。

 

(5)世の中の矛盾や、生死や霊界などの神秘の世界などを解明できる
 (知的好奇心を満たすことができる)

 

・人は死んだらどうなるのか、死後の世界があるのかどうかを教えてくれる。

 

・科学の世界では解明できない深い真理があることを教えてくれる。

 

・戦争や貧困など、この世の悲惨なできごとがなぜ起こるのか、悲惨なできごとを克服していく方法を教えてくれる。

 

・なぜ自分の人生が不運の連続で、何をやってもうまくいかなかったのか?その理由を教えてくれる。

 

この世における様々な悲惨なできごとー戦争や貧困、虐待や差別などーがどうしておこってくるのか、死後の世界がどうなっているのか、こうした簡単には答えられない問いに対してすべてを解明し、理解できる方法があるなどと説かれています。

 

カルトの教学はターゲットとされた人間からすれば一見理路整然としており、非常に魅力的に見えることがあるのです。

 

元カルトメンバーの証言

 

Fさん

 

最初に聞いた教えにすごく感動したんです。心が動かされるような衝撃を受けました。それは『霊』についての話で、自分には体と心だけじゃなく『霊』がいたという話でした。霊が飢えているから、きちんと神様と繋がらなければならないと言われた時に、『本当にそうだ!」と思ってすごく納得してしまいました。その時とても満たされたように感じて、もっとこの話を聞きたいと思いました。

 

(6)神秘的な体験ができる。

 

・修行中、自分が光に包まれ、至福感に包まれた。

 

・教団に入信したら、功徳があった。

 

・神様が自分に話しかけてくるのを感じた。

 

ヨガや瞑想を続けていると、人間はトランス状態に入り、いわゆる不思議な体験、「「神秘体験」を経験することがあります。

 

これは人為的に作成された催眠状態なのですが、こうした神秘体験は非常な至福感をともなうことが知られています。

 

こうした「神秘体験」はカルト組織の教学に大きなリアリティを持たせることがあります。

 

カルトの恐怖感

 

「脱会すれば死後無間地獄に堕ちる」とか、「脱会すれば家族が病気になる。死ぬ」などという、恐怖感を強く持っています。

 

どんなに荒唐無稽に見えたとしても、こうした恐怖感はカルトメンバーにとってはリアルなものであり、軽視すべきものではありません。

 

こうした恐怖感は、カルト組織に疑問を感じ、脱会したくなったときに、脱会を思いとどまらせるブレーキの役割を果たしています。

 

カルトの恐怖感については下の別稿にて詳しく論じてあります。是非ご覧になってください。

 

カルトによる恐怖感の刷り込みをご覧になってください。

 

家族に対する感情

 

マインドコントロールにかかっているからといって、彼らが肉親への愛情を失くしてしまうわけではありません。

 

かれらにとって、両親や兄弟はやはり大切な存在です。

 

ただし、家族に対しての見方や考え方にバイアスをかけられていることはやはり否定できません。

 

ここではいくつかのバイアスについて解説していきます。

 

 

(1)家族に対して優越感を持っている。

 

カルトメンバーは自分たちの組織や教学のみが唯一正しいものだと思っています。

 

家族に対しても、「真理を知らない人」とか「目覚めていない人」などと、軽んじた目で見ています。

 

彼らからすれば、親や兄弟は「自分たちが救済してやるべき存在」であり、「真理に導いてやらねばならない人」たちです。

 

こうした彼らの思い上がりが家族に対して不遜な態度をとらせるのです。

 

 

(2)家族が反対することをあらかじめ想定している

 

組織の反社会性を指摘された場合の反論の仕方を練習していたり、ウソのつきかたを教わっていることがあります。

 

元カルトメンバーの証言〜家族の反対に対して

 

Gさん

 

教団の問題点や教義の間違いを指摘されても、教団の中でそういう批判に対する反論を事前に学んでいたので、そういう知識にもとづいて解釈するので自分の頭では考えないんですよね」

 

Hさん

 

話し合いを提案されても、神さまの試練だと思って燃えていました。教団についての指摘については全く耳に入らずシャットダウンでした。

 

マインドコントロールの影響下にあると、「組織にとって都合の悪い事実」から本能的に意識をそらす癖が身に付きます。

 

教義上の矛盾点を指摘したり、組織の悪い評判を話した時に、「それには何か深い理由がある」とか「このまま続けていればいつかわかる」といったふうに問題から目をそらし、その場で考えることを放棄してしまうのです。

 

これは「思考停止のテクニックと呼ばれていています。

 

(3)家族に対して意地を持っている。

 

・いまさら家族には頭をさげられない。

 

・反対している親を見返したい。

 

・親には負けたくない。

 

・親の人生とは違う生き方をしてみたい。

 

しかし、親には自分の活動を認めてもらいたいと思っています。

 

親御さんの価値観や人生観に対して、対抗意識を燃やしていることがあります。

 

彼らからすれば、カルト入信以前はいろいろな部分で反発を感じていても、親御さんに「勝てるもの」はなかったのです。

 

カルトの教学を手にいれた今、親御さんとは対等どころが、「凌駕してしまう力を手にいれた」という思い込みも手に入れたことになります。

 

こうした「自信」にもとづいて、彼らなりの「人生観」とか「価値観」をもって親を乗り越えていこうとする面もあるものです。

 

 

カルトからの脱会のために

 

カルトメンバーの心理を考えるとき、マインドコントロールの影響を抜きにして考えることはできません。

 

コミュニケーションの取り方に配慮が必要なのは確かなのです。

 

だからといって必要以上に身構えてしまったり、怖れてしまったりする必要もありません。

 

マインドコントロールの技術をいかに駆使したとしても、今までの人生で培ってきたモラルとか価値観を完全に書き換えることなどできません。

 

カルト組織のメンバーとして活動している現在でも、「本来の自分」ー両親への愛情、家族と過ごした思い出、倫理観、正義感ーは心の奥底にしっかりと生きているのです。

 

どんなに人格が変容してしまったように見えたとしても、です。

 

そしてカルト宗教からの脱会支援とは、この眠っている「本来の自分」がよく活動するようにはたらきかけていくことなのです。

 

ではどうすればいいのでしょうか?

 

具体的な方法論はカルト宗教メンバーへの脱会説得の手法をご覧になってください。

 

 

参考ページ

 

マインドコントロールによる恐怖感の刷りこみ

 

マインドコントロール〜そのプロセス

 

マインドコントロール〜事例

 

*元カルトメンバーの証言は以下の文献より引用させていただきました。

 

「カルトからの回復」 櫻井義秀編  北海道大学出版会