カルト被害相談窓口 心の相談室りんどうのブログ

 

カルト体験からの心身の回復について

 

カルト集団を脱会することは自分自身の大切な信念を喪失することです。

 

同時にそれまで自分を支えてきた仲間やコミュニティから切り離されてしまう体験でもあります。

 

それはは非常に大きな苦痛を伴う体験であり、「絶望的なショック体験」となってしまうことも少なくありません

 

このページではこうした脱会時の辛い感情や、脱会時の心身の反応と回復にむけての対処の方法について述べていきます。

 

本稿を読む前に、まず最初に確認して欲しいことがあります。

 

それは、今感じている苦しい気持ちや心身の不調は適切に対処すれば時間の経過とともに軽減され、また元気になることができるという事実です。

 

必ずまた、元気になれます。

 

このことを頭においたうえで以下の文章をご覧になってください。

 

脱会してまもなくのころ

 

脱会して直後のころ、あなたは非常に混乱した心理状態にあるのかもしれません。

 

「絶望感」や「「自責感」など、複数の苦しい気持ちに同時に捉われてしまうことがあります

 

脱会直後に感じる感情として以下のものが報告されています。

 

 

空虚感

 

・組織にいたときは、目的にむかってあんなに燃えていたのに、今は目標がない。

 

・組織にいたときにはたくさんの仲間がいたのに、みんな失ってひとりぼっちになってしまった。

 

・大切な信仰を失ってしまった。もうよりどころにするものがない。

 

不安

 

・信仰をうしなった今、何をよりどころに生きていけばいいのか?

 

・学校での時間をすべて組織の活動に費やしてしまい、歳相応のスキルが身についていない。

 

・組織以外の人たちと交流し、親密になる自信がない。

 

・入信していたことを隠していたい。カルトに関連する悩みを話せない。

 

脱会者の証言
Aさん

 

脱力感しかなかったです。何もなくなったな、って。あ、もう何もない、って。すごく現実感がなくて、自分だけが浮いている感じでした。家族や友達といても、みんな楽しそうだけれど自分も楽しんでいいかもわからないし、どこにいたらいいのかもわからないし、何をしても何かわからなかった。

 

Bさん

 

自分が信じてきたもの、積み上げてきたものが全部なくなっちゃったわけですから、もう焼野原にひとりたたずむ、って感じでしたよね。辛かったですね。今までの友達とかも全部別れるわけでしょ。教団ですごした年月が全部白紙になるわけです。きつかったですね。

 

怒り

 

・今まで本当のことを教えられず、騙され続けてきた。悔しい。

 

・いまだに反社会的な活動をしている教団が許せない。

 

 

脱会者の証言
Cさん

 

自分のしていることが一番正しいと思ってやっていることや、教義に照らし合わせて正しかったら何をやってもいい、何をしてもいいと思っていることがとても腹立たしいです

 

 

自責感

 

組織のいいなりになって、反社会的な行為に手をそめてしまった。

 

・自分は騙されていた。愚かだった。貴重な時間とお金を費やしてしまった。

 

・両親や家族に迷惑をかけてしまった。

 

・勧誘にあけくれて、その結果大切な友人と疎遠になってしまった。

 

・自分が勧誘した人がまだメンバーとして活動しているのに、自分はそれを見捨てて逃げてしまった。

 

脱会者の証言
Dさん

 

やっぱり自分が騙した人たちのことを最近思い出すことが多いです。そういうことと向き合うのが苦しくて逃げてきましたが、自分が被害者であり、加害者であることを忘れてはいけないって思ってます。

 

Eさん

 

(指導という名目でメンバーを1人1人を責め立てて、激しい精神的苦痛を与えてきたが)今でもその彼のことを思い出します。今加害者であった自分のことを考えると思考が止まったような感じになり、自分が人を傷つけ心ないことをしたということ、そういう自分に向き合うのがすごく難しいです。

 

脱会したあとはネガティブな感情が同時に押しよせてくることがあり、それは本当に苦しいものです。

 

今まで紹介してきたケースとは逆に、感情が麻痺してしまい、何も感じることができず、ぼうっとしてしまったり、現実感のなさを感じる方もおられます。

 

このように、カルト集団を脱会してきた方はほとんどの方が大きな混乱を経験しています。

 

ただし、脱会してきた方のほとんどが、こうした混乱を乗り越え、元気をとりもどしているという事実もまたあります。

 

今は実感がわかないかもしれませんが、きっと落ち着ける日はやってきます。

 

そのプロセスについては後述しますが、次にこの時期に特有の心身の気になる症状について解説していきます。

 

 

 

脱会後の心身の不調

 

カルト集団を抜け出したあとの様々な心身の不調には以下のものが知られています。

 

・慢性的な疲労感

 

・ゆううつ感・イライラ感

 

・不眠・寝付きの悪さ

 

・悪夢を見る

 

・ぼうっとしてしまう

 

・思考力・集中力が低下してしまう。

 

・フラッシュバック(突然に教団の中に舞い戻ってしまったような感覚に囚われる)

 

・フローティング(他人や周囲から遮断されているような感覚。集中力の欠如。意識が遊離してしまう感覚。)

 

こうした心身の症状がでてくると、「自分が壊れてしまったのではないか?」と不安になってしまうことがあります。

 

特にフラッシュバックやフローティングを経験してしまうと、「カルト組織のほうが正しかったのではないか?」とか「脱会したのは間違っていたのではないか?」と考えてしまうこともあるようです。

 

しかし、これらの症状は(フラッシュバックやフローティングも含めて)、「大きな喪失を体験したひとたち」のほとんどすべての方が経験する、心身の反応です。

 

カルトを体験した方に限定したことではなく、大切な家族と突然死別してしまったり、災害を体験したり、事件や事故を経験してしまった人のほとんどが経験することなのです。

 

サタンの仕業だったり、罰があたったり、神の怒りに触れたり、悪い因縁のせいなどでは断じてありません。

 

上にあげた心身の症状は、しっかりと休養をとれば時間の経過とともに軽快し、消えていきます。

 

注 不眠症状(眠れない苦しさ)が2週間続いている場合は健康状態を崩している可能性があります。医療機関を受診してください。

 

 

脱会後の恐怖感

 

カルト脱会後に特有の症状があるとすれば、それは「恐怖感をもつこと」だと思います。

 

たとえば

 

・もしかしたら、やはりリーダーが救世主かもしれないと考えてしまう。

 

・組織をやめた自分に恐ろしいことが起こるのではないか?

 

・家族が病気になったり、事故にあってしまうのではないか?

 

・死後、自分は無間地獄におちてしまうのではないか?

 

・来世は虫や動物に生まれ変わってしまうのではないか?

 

・今後、この世界は滅びてしまうのではないか?

 

脱会者の証言

Fさん

 

カルトで禁止されていることを少しでもすると、すぐに地獄行きだと思ってしまいます。

 

こうした恐怖感の植え込みはマインドコントロールの中核をなすものであり、カルト集団であればほぼすべての団体が「恐怖感の刷りこみ」に手を染めています。

 

あのオウム真理教から、霊感商法で有名なあの教団、、ハルマゲドンが来るなど喧伝するあの教団、罰があたる云々と騒ぎ立てたり、死後無間地獄に堕ちるなどとのたまうあの教団などから、「水子のタタリがある」だの「地縛霊の霊障が云々」などという自称霊能者やら拝み屋など、だれでも言うことであり、きわめてありきたりで陳腐なものです。

 

今、あなたが何かしらの恐怖感を感じているとしたら、それはただの人間に心理学的な手法を用いて植え付けられたものです。

 

決してサタンの仕業であったり、先祖の因縁であったり、神の怒りであったり、カルマの法則によって引き起こされたものではありません。

 

すぐにはしっくりこないかもしれませんが、まずは以下のことを理屈として理解してください。

 

@恐怖感の植え込み、はどこのカルト教団でも利用するありふれたものであること。

 

A心理学的なテクニックが用いられたものであり、人の悪知恵によって生み出されたものであること。

 

B恐怖感が抜けないのは、「何か起こったときの思考パターンが習慣化されている」からであり、それは心理学的に説明しうること。タタリや因縁やサタンの仕業などではないこと。

 

突然恐怖感が襲ってきたら、大きく深呼吸をしてみてください。

 

大きく息を吸って、吐き出すときにお腹を手で押さえて、空気を押し出しながら息を吐くのです。

 

息を吐ききったら、思いっきり空気を吸い込みます。

 

呼吸を整えることは、大きく乱れた感情を鎮静化する効果があるのです。

 

いざという時のために普段から練習しておいてもいいでしょう。

 

たまたま、偶然に脱会したあとケガをしたり、家族が病気になったりしたとき、「やはり脱会して恐ろしい事が起こった」と感じてしまうことがあります。

 

まったくの偶然を「タタリ」や「罰」と認識してしまうのです。恐くなってしまったかもしれませんが、これは全くの偶然にすぎません。

 

まとめ〜脱会直後の過ごし方〜

 

脱会して間もない時期は以下のことに気をつけるようにすればよいでしょう。

 

(1)しっかりと休養をとり、体力を回復させる。

 

少し意外で拍子抜けしたかもしれませんが、この時期にまず最優先すべきことです。

 

カルト集団にいたときの無理な活動と精神的なストレスに加え、脱会したときのショックが重なり、自分でも知らず知らずに心身が消耗し、疲労をため込んでいるケースがあります。

 

心身に疲労が溜まっている状態では、混乱した感情がなかなか鎮静化しませんし、昂っている感情に思考力が引っ張られてしまい、カルトでの体験を再検討したり、自分の将来について考えてみてもうまくいきません

 

しっかりと睡眠をとること、そしておいしいものを食べて栄養をつけること。そして十分休養をとること

 

まずはここからはじめてみましょう。

 

(2)罪の意識や不安など、辛い気持ちを言葉にして表現してみる

 

ネガティブな辛い感情はできるだけ言葉にして表現してみましょう。

 

安心な場所で誰か信頼できる人に「辛い気持ちを語る事」は辛い気持ちを低減するうえで大きな効果があります。

 

とりとめのない話しでもいいし、同じ話を何度もしてもいいのです。

 

同じ話を何度もすることによって、人は辛い体験に馴化していくという面もあるのです。

 

人に話をすることが難しい場合はノートなどに気持ちをかき綴ってみるのもいいでしょう。殴り書きのメモでもかまいません。

 

この時期に気をつけるべきこと

 

(1)疲労を溜めないこと

 

今は大きなダメージを受けているのです。

 

なんとなく気が急いていて、いろいろアクティブに活動をしてみたり、在籍していた教団についての情報をネット検索することにに没入してしまいがちです。

 

ただ、脱会直後のこの時期だけは日々の活動をセーブし、体の中にエネルギーを溜めていくことを心がけてください。

 

(2)恐怖感が強い場合には、専門家に早めに相談する。

 

恐怖感が強く、とても辛い場合には早めに信頼できる宗教家やカウンセラーに相談してみましょう。

 

我慢する必要はありません。

 

 

少したって落ち着きはじめたころ

 

在籍していた組織と教学について、再検討する。

 

休養をしっかりとって、基礎体力が戻ってきたところで、カルト集団にいたときの体験を整理してみることをお薦めします。

 

・自分はどういう経緯で勧誘されてしまったのか?

 

・どうして組織や教学を信じてしまったのか?

 

・カルト集団の教学の間違いは何か?伝統的な宗教と何が違うのか?

 

こうしたテーマを振り返ってみると、「あの時勧誘されたのは、仕方のないことだったのではないか?」とか「カルト内で活動していた時間もすべてが無駄だったとは言えないのではないか」ということに思いが至ることもあります。

 

刷り込まれた恐怖感について検討する

 

脱会後の恐怖感がまだ持続している場合は、この恐怖感について引き続き考察することもこの時期のテーマとなります。

 

まだ怖さが残っているのであれば、以下の手順で考えてみましょう。

 

@そもそも、組織の掲げる教学は間違っているものではないのか?

 

A実際に罰があたったり、予言が当たったと感じたことはあるのか?

 

Bあるとすればそれはいつか、どんなことだったか?

 

C罰があたったり、予言が当たったりということではなく、別のとらえ方ができないか?
 たとえば下のように。

 

・単なる偶然ではないのか?

 

・罰やタタリがあったなど、根拠のない決めつけをしていないか?

 

・なにか不幸なことがあったとき、それを無理に自分に関連づけていないか?

 

・なにか悪いことがあったとき、「次にもまた起こる」と一般化していないか?

 

・なにか恐ろしいことが起こるとビクビクしていたから、失敗したのではないか?

 

 

突然恐怖感に襲われたときなどは、先に説明した呼吸法が有効です。

 

日頃から練習しておくとよいでしょう。

 

「突然怖い思いをしても、『コレをやれば落ち着ける』というものをひとつでも持っていればそれは自信の源となります。

 

この時期の揺れる感情について

 

脱会直後の混乱を通り抜け、少し落ち着きを取り戻したときに、組織に残してきた仲間のことを思い出したり、組織での活動が懐かしく感じたりすることもあります。

 

あるいは教団のほうが正しかったのではないかと感じてしまうこともあるかも知れません。

 

そうした気持ちがあると、「本当に自分は脱会できるのだろうか?」と不安になってしまうこともあったり、「家族に対して申し訳がたたない」と感じてしまったりすることもあるかもしれません。

 

なにか吹っ切れない気持ちが残っていたり、自分を責めてしまう気持ちが辛いこともあるかもしれません。

 

でも、この時期に「感情が揺れてしまう」のは自然なことです。

 

長い間頑張ってきた組織の記憶を完全には吹っ切れないのは、人としてあたりまえのことです。

 

脱会を経験した人たちは、皆、揺れたり迷ったりしながら、自分なりの答えを見つけ出してきました。

 

自分なりに腑におちる答えが見つかるまで、いろいろなことを迷ったり、揺れたりしてもいいのです。

 

 

社会復帰をはじめる段階で

 

混乱していた気持ちが落ちついてきて、社会復帰をはじめるときに、「周囲の人たちとどうもうまくなじめない」とか、「周囲の人間関係がしっくりこない」ということが、問題になることがあります。

 

この項ではこうした問題について説明していきます。

 

「いや、人間関係については自分は大丈夫」と感じる方はこの項は読み飛ばしていただいてもかまいません。

 

対人関係に困難を覚えるケース

 

脱会後、学校に復学したり、新しい職場に再就職したときに、「他人が信じられない」とか、「うまく友達を作れない」といった人間関係についての悩みを強く感じる方もおられます長い間組織の中で過ごしてきたため、世間の流行や社会情勢に疎くなってしまったり、「年齢相応の社会常識が身についていないのではないか?」と心配になってしまったりという方もいました。

 

脱会者の証言
Hさん

 

家族以外の人とは何を話していいかわからず怯えていました。いつもびくびくしていました。人が言い争っている姿を見たときには恐ろしくてその夜眠れなかったです。
Gさん

 

脱会後、男性が近くにいるだけで強く意識をしてしまうようになりました。せっかく就職できたのに、職場においてそのことがかなりのストレスとなりました。
(Gさんは女性。脱会してきた教団には異性関係について厳しい戒律があった)

 

こうした、脱会後の人間関係の悩みについては、対処の方向については千差万別であり、一概に「こうすべき」と言い切れるものはありません。

 

ただし、「ここまで来れば回復にはもう一歩」であり、「今感じている困難は最後の壁」であるとは言えると思います。

 

関心が教団から、自分の将来や周囲の人々に向いてきているからです。

 

 

対人コミュニケーションの改善については、さまざまな手法が開発されています。

 

こうした困難にぶつかったばあいは、人を頼り相談してみてください。

 

人間関係の悩みの解決については、社会資源が豊富です。

 

ここを乗り越えれば、ゴールが見えてきます。

 

脱会後の苦闘のゴール

 

脱会後に様々な感情に捉われたり、いろいろな事を考えねばならなかったり、今はとても大変な状況だと思います。

 

こんなときは、「いつになったらゴールに辿り着くのだろう」という思いにとらわれることもあると思います。

 

それは、「どのあたりがゴールなのか」ということが設定されていないことゆえの悩みなのでしょう。

 

あまりにも完成された人格を作ることをゴールにしてしまったり、完全にすっきりして爽快な気分になれることをゴールに設定したら、到達するのは難しくなってしまいます。

 

いろいろな悩みを抱えていても、「ちょっと一息つけたかな」と感じられたり、「もうそろそろいいかな」と感じられたところをゴールにしてはいかがでしょうか?

 

「いろいろあっても、まあなんとかなるんじゃないか」

 

世の中の価値観は曖昧で、私たちはその中をある意味ちゃらんぽらんに生きています。

 

すべてを突き詰めて答えをはっきりさせることはおそらくできません。

 

矛盾に満ちた感情や曖昧なことを曖昧なまま抱えて生きていくということでいいのではないでしょうか?

脱会者の証言
Iさん

 

仕事を一生懸命やって、家族を養って、それで社会の中で一生懸命頑張っていくことで自信を回復していったと。それに尽きます。それ以外何もないですね。一生懸命やっていろいろ失敗しながら挫折しながら、認められていくことが、一番の結果であり、回復だったと思います。自分の場合は。

 

最後に〜

 

カルト体験によるダメージからの回復に必要な時間はひとりひとり違います。

 

なかなか思ったとおりのイメージで元気になれなかったりする場合でも、がっかりしてしまうことはありません

 

あなたは自分自身の意思でカルトの罠から脱出してきたのです。

 

それには勇気がいることですし、こうして勇気を振り絞ることは誰にでもできることではありません。

 

カルトを辞められたということは、あなたはカルトに勝ちはじめたということです。

 

また、必ず元気になれる日は来ます。

 

その日を信じて、毎日を過ごしていきましょう。

 

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*「脱会者の証言」は下記の文献より引用させていただきました。

 

「カルトからの回復」 櫻井義秀編  北海道大学出版会

 

「自立への苦闘」 全国統一教会被害者家族の会 編 教文館

 

 

 

 

 

 

 

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