カルト体験〜家族はどう支えるか?

 

本稿では家族の方向けに、脱会後のメンバーを支援する際のケアについて注意点を述べていきます。

 

カルトを脱会する経験は大きな喪失の体験であり、脱会メンバーの心身に大きな衝撃を与えることがあります。

 

脱会さえすればそれで安心というわけではなく、脱会後にも配慮すべきこともやはりあるのです。

 

元カルトメンバーのほとんどは元気をとりもどし、また、社会の中で安定した生活を送っています。

 

今を乗り越えればゴールはもう少しなのです

 

こうしたことを念頭において、本稿を読み進めてください。

 

カルトメンバーが脱会してまもなくのころ

 

この時期にしてあげたほうがいいことはふたつあります。

 

(1)心身の疲労を回復させてあげること

 

(2)本人の感じている苦しさをそのまま認め、見守ってあげること

 

以下に説明していきます。

 

 

心身の疲労を回復させる。

 

心身の疲労を回復させること。

 

これは最優先事項にして、最重要課題とお考えください。

 

カルトメンバーであったときの昼夜にわたる激しい活動や、脱会前の心理的な葛藤、脱会時の喪失体験などにより、心身に疲労が累積していることがあります。

 

心身の疲労が回復されず、エネルギーが消耗された状態であれば、フラッシュバックやフローティング、不眠やイライラなどの身体症状はなかなか改善できません。

 

また、罪悪感や不安などの苦しい感情もなかなか落ち着かせることができません。

 

脱会直後にはまず、しっかりと栄養と睡眠をとってもらい、心身の疲労を回復させてあげてください。

 

ネガティブな感情がなかなか落ち着きをみせず、心身の不調が続いている場合は、まず本人を休ませ、疲労を回復させることを第一に優先してください。

 

本人感じている苦しさをそのまま認め、見守ってあげること

 

この時期は今の本人のありのままの姿を認め、ごく普通に接しながらも、見守ってあげるような接し方でよいと思います。

 

「あなたのためを思って」という理由で、いつも傍らにまとわりつくような対応はよくありません。

 

無理に元気づけたり、前向きの考えにかえようとしたりするのもよくありません。

 

不安や、苦しい気持ちが語られた時には、それを否定せずに聞いてあげるだけで十分です。

 

本人の感じ方や、考えていることを無理に変えようとする必要はありません。

 

たとえば罪悪感について本人が語っている場合、本人の感じ方を否定して、「あなたは悪くない」とか「君の責任ではない」といったような声掛けをおこなうことも、本人の負担になることがあります。

 

罪悪感は自ら語り、自らが緩めるものです。

 

そしてそもそも、罪悪感のすべてをなくすることはできないのです。

 

今は本人の感じている気持ちをそのまま受け止め、聞いてあげてください。

 

また、腫物に触るように扱ったり、「カルト体験を乗り越えたサバイバー」などといったように英雄視してしまうことも本人にとって負担になりえます。

 

「必要以上に特別扱いされている」と感じることは、本人の「自分への信頼感」を損ね、孤独感を強めてしまうことがあるのです。

 

ただし、「自分は地獄に堕ちるのではないか?」などといった、カルト特有の恐怖感が強い場合などであれば、カルト問題の専門家に相談してください。

 

接し方に迷ったときには

 

ここまで読んできて、「どうやって接すればいいのだろう」と迷う方もおられるかもしれません。

 

こんなときには本人に接し方をきいてみましょう。

 

「こういう時にはどう言ってあげたら一番楽なのだろう」

 

「こういう言い方って辛く感じるかなあ?」

 

といった具合に素直に聞いてみてください。

 

「本人に聞いてみる」という姿勢は、「あなたのことを大切に考えている」という気持ちを同時に伝えることでもあります。
こうした会話も、共感的なコミュニケーションとなりうるのです。

 

やるべきではないこと

 

ここではこの時期家族がやるべきではないことをお伝えしていきます。

 

本人の責任を追及すること(家族の怒りをぶつけること)

 

救出が成功し、すこし余裕がでてきたときに油断をして、本人を責めてしまう言動をとってしまう方もおられます。

 

たとえばこんな言動です。

 

 

・脱会にあたって、親が勝ち誇ったように喜ぶ。

 

・夜、窓辺で母がこれみよがしにしくしく泣く

 

・今まで本人が信じてきたものを片っ端から嘲笑する。

 

・家族がこのことのためにどんなに苦労してきたか、どれくらいお金を使ってきたかなどという苦労話をする。

 

・なにかにつけて、「まだマインドコントロールされている」などとバカにする。

 

 

彼らは皆、「家族に迷惑をかけてしまった」という罪悪感に苦しんでいます。

 

こうした罪悪感を家族が刺激し、増幅するようなことがあってはなりません。

 

罪悪感が落ち着かず、増幅していってしまった場合は、身体症状や辛い感情が収まらず、逆に悪化してしまうことがあります。

 

本人を無理に元気にしようとすること

 

喪失の体験から立ち直り、回復する時間は個人差が非常に大きいことが知られています。

 

なかなか元気になれない様子ですと、親御さんとしても気をもまれることが多いと思いますが、今は見守ってあげる時期です。

 

「ポジティブな思考法」を押し付けてしまうことは本人にとって負担になることがあります。

 

ただし、不眠期間が2週間以上続くなど身体の不調が続いている場合には医学的ケアが必要になることがあります。

 

本人を腫物扱いすること

 

本人が非常に大きな傷を負っていることは事実ですが、だからといって腫物のように扱うのもよくありません。

 

ごくごく普通に、自然に接してあげてください。

 

最後に

 

支える家族の皆さんの調子はいかがですか?

 

脱会説得が終わったあと、急に疲れが出てくることがあります。

 

どこか体の調子が悪かったりした場合は、自らを労わってあげることを忘れないでください。