カルト宗教メンバーへの脱会説得の手法

 

大切な人ががカルト集団のメンバーであることがわかったとき、家族の方が心配し、脱会を促す説得をすることは当然のことです。

 

メンバーになって、ごく初期の場合であるならば、その組織の問題点などの外部情報を伝えることにより、比較的に簡単に脱会させることは可能です。

 

その場合は、必ずこの問題に詳しいカウンセラーの力を借りてください。

 

ただし、カルトメンバーとして組織の活動に深くかかわり始めている場合、説得の言葉すべてが否定され、話し合いが激しい口論になってしまいます。

 

もしも今、そのような状態であればどうすればいいのでしょう。

 

まず、頭ごなしにそのカルト集団のことを否定するのをやめましょう。

 

そのうえでカルト脱会に向けた説得を開始しましょう。

 

救出のための基本戦略

 

それではどうすればいいのでしょうか?

 

二つの重要な戦略があります。

 

1、「親しみと信頼の関係」を構築する。

 

どんなに洗練されたマインドコントロールの技術を用いても、人間の人格や価値観を全面的に書き換えることはできません。

 

どんなに「昔と変わってしまった」ように見えても、「家族に敵対的に見えた」としても、昔から持っていた「良心」とか「親御さんに対する愛情」などは、カルトメンバーの心の中に、失うことなく残っているのです。

 

カルト宗教メンバーに対するカウンセリングの本質とは、カルトメンバーと「親しみと信頼の関係」を作り、「コミュニケーション」を積み重ねながら、本人の心の中に眠っている「良心」とか「良識」を呼び起こすことです。

 

まず、カルトメンバーと「親しみと信頼の関係」を作り、それと土台にして少しづつカルト団体について話し合い、すこしづつ彼(彼女)のカルトの信念に揺さぶりをかけていきます。

 

2、カルトメンバーの居場所を確保する。

 

カルト組織と家族との、どちらが本当の自分の居場所なのか?

 

彼(彼女)が安心して本音を語り、安心してくつろぐ場所はカルトの中なのか、それとも家族の中にあるのか?

 

カルトからの脱会説得は家族とカルトとの愛情の綱引きという面もあります。

 

どうすれば、彼(彼女)の居場所を作ることができるのか?

 

それを考え続けることが必要です。

 

それはカルト組織の言い分を丸呑みすることではないですし、家族の言い分をすべて理解してもらう、ということでもありません。

 

それはひとりひとり違います。

 

「カルトメンバーをやめさせることはできない。しかしやめることはできる。」という言葉があります。「脱洗脳の方法」とか「マインドコントロール解除の方法」など実際にはありませんし、結局は本人の自覚を促し、自ら脱会を決意するしかありません。それには、「脱会した後の自分の居場所」がしっかりと確保されていなければなりません。

 

 

脱会に向けてのプロセス

 

脱会説得の開始から、脱会社会復帰するまでのプロセスはおおむね5つの時期を通ります。

 

本稿ではそれを1段目の階段、2段目の階段と表現していますが、それを順に説明していきます。

 

1段目の階段 準備をして、まずは日常的な会話を

 

また救出活動をはじめる準備段階としてとして、大切なことが3点あります
順に説明します。

 

その1 入信している教団について調べる

 

当人が何をどのように信じているのか、何をカルト宗教に求めているのか、何をめざしているのかを考えていきます。

 

まず、本人が入信している教団のことを可能な限り調べます。

 

教団の教義、行動規範、組織の形態などを著作物、新聞、公式HP、ネット掲示板での情報など、できる限り調べます。

 

入信している教団についてはやはりある程度の知識がなければ、本人との話し合いは進みませんし、本人の気持ちを理解することはできません

 

カルトメンバーの心理についてはマインドコントロール〜カルトメンバーの心理も参考にしてください。

 

その2  家庭内でのルールを作る

 

本人の信仰活動を認めるとしても、すべて相手のいいなりになってはいけません。教団での活動にもルールを設定して守らせなくてはなりません。

 

ここでは、最低限守らなければならないことをお伝えします。

 

@対話にあたっての暴力の禁止

 

話しあいの過程での暴力は一切禁止です。また暴力行為は絶対に認めてはいけません。

 

入信者を暴力的に拉致監禁し、集中的に説得するような手法は当相談室は行いません。

 

このような手法を用いた場合、入信者は心身に重大なダメージをうけることとなり、脱会後の社会生活に困難をきたす可能性があります。

 

A教団活動に対する金銭的援助の禁止

 

毎月決まったお小遣い以外の金銭を渡してはいけません。「お金を渡してくれたらこれを機会に教団をやめる」という話にも絶対乗ってはいけません。

 

B勧誘を認めない

 

本人が信仰するのはいいけれど、他の人を教団に勧誘することには反対してください。。それでも本人は親に隠れてこっそりと勧誘しますが、親としてそれを肯定してはいけません。

 

親御さんの知らないところでこっそりと勧誘するのは止められないとしても、親御さんの知る範囲での勧誘活動は禁止してください。

 

以上の3点は絶対に守ってください。

 

その他のルールについてはそれぞれの家庭内で決めていただいて大丈夫です。

 

ルールは家族の側も守るようにしてください。本人と約束したことは必ず守ってください。

 

だからルールは親子で守れそうなことを決めてくだい。

 

そして、本人がルールを破ったときには厳しく怒ってください。

 

ルール破りを認めると、親の側がなめられてしまいます。

 

その3 家族間で「カルトのリスク」について話し合う

 

「なぜ、そのカルト集団のメンバーあることに、反対するのか?」

 

説得の準備段階として、家族のみなさんで意見を交換してみましょう。
注、カルトメンバーを外した、救出にあたる家族のみのミィーティングです。

 

以下のことがテーマになるかと思います。

 

家族としての意見、感性にズレがある場合は、みなさんは徹底的に話し合ってください、

 

カルトメンバーは外れているので、この場では本音の話し合いをします。

 

・なぜ、その教団に入信していることに反対するのか?

 

・その教団の教えのどこがおかしいと思うのか

 

・脱会したあと、どうしてほしいのか?どんな生活をしてほしいのか?

 

・学業のこと、就労のことなど、今不安なことは具体的に何か?

 

カルトメンバーは外れているので、この場では本音の話し合いをします。

 

家族としての意見、感性にズレがある場合は、みなさんは徹底的に話し合ってください、

 

こうした家族の対話から、本人に対する「説得の言葉」が生まれてきます。

 

また、実際にカルトメンバーとでコミュニケーションをとる時のリハーサルとなるのです。

 

カルトメンバーがお子さんであった場合、彼(彼女)は「夫婦の関係性」をよく観察しています。父母が二人で協力し助け合っていこうとする姿勢は入信者本人に対して良好な影響を与えます。
逆に「母親ばかりが熱心で父親が無関心」であったり、「父と母の間に不信感があった」りした場合、カルトからの救出は非常に困難になります。

 

まず、日常会話からはじめる

 

準備が整ったところで、コミュニケーションの再構築をはかります。

 

まずは脱会説得を中断し、日常的な会話をふやしていくように心がけてください。

 

まずは「おはよう」「おやすみなさい」「いってらっしゃい」といったあいさつからはじめてみましょう。

 

一緒にご飯をたべたり、一緒にテレビを見たり、そんなことからはじめてみましょう。

 

「今日は暑いね。」

 

「あのドラマの女優さん、いいことを言っているね」

 

「あの事件のニュース、どう思う?」

 

カルトメンバーが一人暮らしをしているケースでは、「元気にしてる?」と手紙を出したりしてみてもいいでしょう。

 

ささやかな交流でも継続すること。

 

あなたが大事、あなたが必要、あなたを信じてという気持ちを伝えること。

 

カルトメンバーは自分の教えは非常に素晴らしいものと思っていますし、周囲の家族や友人よりも自分は優れていると思いこんでいますが、同時に自分の活動の意義、自分の気持ちを大切な人(両親、兄弟、夫、妻、子供)にわかってほしいとも思っているのです。

 

こちら側の態度や接し方を変えてみれば、コミュニケーションを回復させることは十分に可能です。

 

カルトメンバーが安心して話ができる関係を作り、それを維持すること。

 

それは意外に難しいですし、忍耐のいることです。

 

1段目の階段で提示された課題が十分にクリアできていなければ、脱会説得は非常に難しいものになります。

 

 

2段目の階段 疑問を蓄積させていく

 

信頼関係ができてきて、カルトメンバーが安心して話ができるような環境が作れたならば、そこではじめて、カルト集団内部の活動や、教義についての話し合いをもつことができます。

 

とはいえ、堰をきったように批判をしはじめるのではなく、穏やかにカルトメンバーの話しを聞くことからはじめてみましょう。

 

本人と話し合うときには、必ず礼節を守ってください。本人の人格やプライドを傷つけるような言動は厳禁です。

 

親子の間であっても、です。

 

例として、以下のような話題から聞き始めるとよいでしょう。

 

・どんなきっかけで、入信しようと思ったのか?

 

・入っているカルト団体の好ましい点は何か?メンバーでいて好ましい点はなにか?

 

・教団で仲のいい友達はいるか?その人たちのことを教えてほしい

 

・これまで何を学んできたのか?

 

・教団の一日のスケジュールはどうなっているのか?

 

・自分が入信して以前と変わったと思えることがあるのか?

 

・どんなことにやりがいをかんじているのか?何に魅了されているのか?

 

・活動を通じ、何を実現したいのか?

 

・活動を続けていく中で何か神秘的な体験をしたか?

 

カルト団体の主張や教学にも実は正論であったり、「いいな」と感じる部分があったりするものです。「この点についてはそうかもしれない」という話がでたら、潔く認めて評価することも大切です。

 

相手の言い分や主張の妥当性を認めたうえで、素朴な疑問を投げかけていきます。

 

以下のような問いかけもよいでしょう。

 

・教団に入る前の人生の目標は何だったのか?今でもかわらないのか?変わってしまったのだろうか?

 

・教団の教義や活動について、疑問に思ったことについて、教団の指導者は答えてくれているのか?
(「やっていればわかる」とか「勉強を続けていればわかる」などとはぐらかされていないか?)

 

・活動を続けることにより、将来の生活にリスクがでてくるのではないか?

 

なお、ここで相手を論破し、説得することが今の目標ではありません。

 

今の目標は相手を「揺さぶること」です

 

話の結末は尻切れトンボでもかまいません。

 

議論の結着をつけること以上に「言葉のキャッチボールがきちんとできているかどうか」が重要です。

 

家族の良かったと思われる対応
元信者の証言

 

キリスト教系A教団

 

・「お前は一生懸命だけれど」と自分のことは常に評価してくれた。時間的ゆとりを与えてくれ、どんな話でも忍耐強く聞いてくれたのが良かった

 

・自分が話すことについていったんは受け入れてくれたこと。家族も一緒になって勉強してくれたこと

 

家族の悪かったと思われる対応

 

・偏見と思い込みでものを言うし、自分の言うことが家族にきちんと伝わらない。自分たちのことは棚にあげて偉そうなことを言う。

 

・なんとか脱会させたいと圧力ばかりかけてきた。心を閉ざすより他はなく、長い膠着状態が続いた。時間のかかりすぎはかかわり方に問題があったからだと思う。

 

 

 

3段目の階段 救出と脱会を実行する

 

実はカルト教団内部での活動はカルトメンバーにとっても非常に不条理で、苦しいものです。

 

教団での活動が長くなり、マンネリ化しはじめ、なおかつ教団内部での人間関係に軋轢が生じたり、今まで信じてきた教学に対して自信を失い、教団をやめたいと思うタイミングは必ずやってきます。

 

また、このタイミングであれば、カルト集団の反社会的な行動や教義のまちがいなどを受け入れる可能性が高くなります。

 

そしてこのタイミングで情報を集中的に与え、脱会を促します

 

元信者の証言〜やめるきっかけ

 

仏教系C教団

 

・オレは結局、家族とか友達とかを捨てきれなかった。

 

・活動や教学に疑問があって上の人にいろいろ相談しても「それは魔だ。勧誘うれば解決する」とか聞き飽きたことを言う。

 

・教団の本しか読むなって言われていて・・・だんだん勧誘が決まらなくなってきて上の人から文句を言われる。勧誘すると友達の中でうわさになるから遊ぶ相手も限定されちゃって。いいことないし、やめようと思ったんです。

 

 

「脱会を促すタイミング」すなわち「本人がやめたい」と考えているタイミングとは、具体的には教団と物理的な距離を取り始めたときです。

 

・朝晩に必ず行っていたお祈りをやらなくなる

 

・いつも行っていた教団行事に行かなくなった。

 

・離れて生活していたのだが、突然実家に帰ってきた

 

以上のような行動があった場合、「本人がやめたがっている」可能性があります

 

教団を離脱させるための情報とは以下のようなものです。

 

・マインドコントロールの仕組み

 

・教団の掲げる教義の間違い、矛盾点

 

・教団の起こしてきた社会的な事件

 

こうした情報を集中して与え、教団からの離脱をカルトメンバーに決断させるのです。

 

「やめるタイミング」を逃してしまうと、またモチベーションを取り戻し、活動を再開してしまうことがあるので注意してください。

 

 

*、脱会の手順については下の方法を参考にしてください。
カルト宗教からの脱会の方法〜脱会届の見本

 

 

 

4段目の階段 脱会後の落ち込みを支える

 

「カルトをやめさえすれば、それですべてが解決するのか」といえばそんなことはありません。

 

カルトをやめたあと、まず心身の健康をとりもどし、実社会の中で自分なりの価値観をとりもどし、自分の居場所を見つけ、社会に適応していくことがやはり大切なのだと思います。

 

カルトをやめたカルトメンバーは大きな傷つきを経験し、大きな疲労感をもっています

 

まずは心身を休め、疲労を回復させ、特有の自責感や空虚感、不安などの感情をケアしていきます。

 

カルト宗教のメンバーは組織を脱会したあと、しばらくの間、心身と感情の不調に悩むことがあるのです。

 

元信者の証言〜脱会後の苦しみ  

仏教系D教団

 

・出たあとはみんなと同じです。焼け野原ですよね。自分が信じてきたもの、積み上げてきたものが全部なくなってしまうわけですから。もう焼け野原にひとりたたずむ、っていう感じですよね。辛かったですね。今までの友だちとかも全部別れるわけでしょ。十数年の人生が全部白紙になるわけで、辛かったですね

 

「組織はやめたのだけれど、燃え尽きたようになってしまった」とか「家族や友人となじめないとか」、「自分や家族が不幸になるという恐怖感が抜けない」とか・・・・

 

このような後遺症を残したままでは、これからの人生の質を大きく損ねてしまいますよね。

 

カルト宗教のメンバーが、脱会したのちも、家族や周囲の方たちは、本人を支え、励まし続けなければなりません。またそれは家族の側の「希望」の押しつけになってはいけません

 

くわしくはカルト体験からの回復をご覧になってください。

 

5段目の階段 社会復帰を支援する

 

本人の体力が回復し、カルトでの体験をそれなりに咀嚼できるようになった段階で、就職先を考えたり、改めて将来の目標を設定したりすることを考えます。

 

「職場での対人関係に自信をもてない」とか「異性との付き合い方がわからない」といったことが悩みが聞かれることがありますが、この階段までくれば、出口はもう少しです。

 

 

あなた自身は大丈夫ですか?

 

ひょっとしたら、一番傷ついているは家族の方かもしれません。

 

息子が、娘が、妻が、カルト宗教に入ってしまった・・・

 

こうした悩みと苦しみはなかなか周囲には相談しにくいものでしょうし、相談してみてもなかなか理解してくれる相談機関は少ないようです

 

一番気をつけなければならないのは、救出のために奮闘しておられる家族の方が体を壊してしまうことです。

 

説得には時間がかかります。そして、話し合いをはじめてから脱会に至るまでの時間は非常に個人差が大きく、また、「具体的にこれくらいの時間」と予測がつけることができません。

 

この「予測のつかない」という部分が非常に苦しいところなのです。

 

「疲れたな」「しんどいな」と感じることがあつたら、そんなときは少しこの問題から離れて心身を休めてください。

 

お酒や映画、ゴルフやランニング・・・

 

少しばかり問題から離れてリラックスの時間を持つことは悪いことではないですし、気兼ねすることなどありません。

 

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カルトメンバー家族の葛藤

 

 

カルト集団による被害は、カウンセラーに相談を続けながら対応していくことを強くお薦めいたします。

 

ご家族だけでの対応で対応しようとするとどうしても過剰に不安が募らせてしまったり、対応法に煮詰まってしまったりしがちだからです。

 

心の相談室 りんどうでは、大切な人がカルト集団に入信してしまい、接し方に迷ったり、対応に困っている方への相談活動を行っております。

 

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